K西学院に通い始めた頃、職場に府大生でHヤシという男がいた。学力はそこそこだが、気障な洒落男。派手なシャツにグラサンが好み、長髪にはパーマを欠かさない。１８０センチ超の上背で痩せ形。下宿生にも関わらず、既に免許も車も持つ結構なご身分。密かに「モヤシの若旦那」とあだ名する。父親に買って貰ったという車が凄い。「ケンメリ」こと、Sラインクーペ２０００GT-X。車離れした現在からは想像もつかないだろうが、憧れのデートカー最右翼に位置。中古を購入したと言うが、１２５万円と高額。限りなく新車に近い。年間学費の１１万円を稼ぐのに汲々としているまちゃつからすれば、殿上人の暮らしぶり。見に来ないかと誘われるが、残念ながら当方にその気は全然ない。後に安物マンションを購入できるほど車に入れあげるまちゃつだが、その頃は一生免許を取るまいと決めている。交通事故に纏わる悲劇が始終報道されていたからである。「ジー・ティー・エックス」の代わりに「ジー・ティー・ペケねぇ」と返したのが理由か、しばらくお呼びがかからなくなる。諦めたかというと、さにあらず。どうしても見せて自慢したかったか、キャンプ先の吉野にジー・ティー・ペケと共に現れた。翌日、帰阪しようとして片側が崖の隘路で落輪。不様な格好のまま身動きが取れなくなるのだが、待ち受ける凶事をモヤシ君が知るはずもない。ルンルン気分である。
鳴く力なくしたクマゼミ飛来して
洗車のタオルを掴んで放さず
それでは、本日のシャッフルクイズ。
『帆掛けも富もない（ホカケモトミモナイ）』
今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント：懸命の努力や忍耐も報われない。
