日本の観光地に詳しい、ペーダ先生に一本とられたことがある。熊本の水前寺成趣園で撮影した写真を紙袋から取り出そうとした時のこと。「富士山の写真がきっとあるはずだ」とおっしゃる。富士山があるのは、山梨と静岡の間。見えるのは、一番遠くて紀伊半島からが精一杯。熊本から見えるはずがない。熊本県八代市には「彦一ばなし」が伝わる。天狗の持っている隠れ蓑が欲しくなった彦一が、竹の切れ端を千里眼と称し遠くの場所が見えるふりをする。千里眼が欲しくてたまらなくなった天狗をだまし、うまく隠れ蓑をせしめる話だ。超望遠の千里眼でも持たない限り写せる訳がない。中部地方ではなく九州に出かけたのだ、と説明しても、写っているの一点張り。どうぞご自由にご覧ください、と袋ごとお渡しする。「ほら、見つけた。富士山が写っているじゃないか」という声まで１０秒もかからなかった。写っていたのは確かに富士山である。実物の千分の一ほどのスケールではあるが…。やられた、と思った。成趣園は、藩主細川忠利が東海道五十三次をモデルに造らせた池泉回遊式庭園である。当然、富士山が築山で築かれている。ペーダ先生の「上野に行ってきたよ」発言に東京ばかりを連想し、三重県の伊賀上野を思いつかない可哀想な大学生を何人も見ていたのに、まちゃつもはめられてしまった。「してやったり」という先生の表情が目に浮かぶ。
それでは、本日のシャッフルクイズ。
『ビン缶、軽視（ビンカンケイシ）』
今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント：ちょっとした刺激にもたやすく感応。
