今ではもう見られないが、阪急神戸線と今津線の線路が直交していた頃のこと。３６年前である。西宮北口駅は特急停車駅のため、神戸線のホームは島式になっている。各駅停車と優等列車が同じホームに同時に停車できるようにするためだ。ただ、梅田行きと三宮行きのホームは同じ場所にはない。東西方向にずらして設置されている。その間を今津線の電車が、南北方向に走行するためである。今津線のホームは、神戸線の線路の北側に相対式で作られている。乗り換えのためホームを移動するには地下通路を通らねばならない。出入り口が５カ所あるその地下通路で白人女性に声を掛けられた。“Umeda,Umeda!”としかしゃべらない。当時１７６ｃｍのまちゃつでも見上げねばならない長身のブロンド。１８５ｃｍくらいか。ブルーの虹彩は海を思わせる。黒い島（瞳孔）が見つめる場所の明るさによって拡大縮小を繰り返す。“This way.”と言って、上り梅田方面ホームに案内すると各駅停車が到着。“Umeda?”“That's a local. An express will soon arrive over there.”“On the other side of the platform?”“Yes. By the way,where are you from?”“Sweden.”地下通路のイングリッド・バーグマンが最初“Umeda!”しかしゃべらなかったのは、多分失敗から学んだからかもしれない。情報を得ようと流暢にしゃべって、英語のできない日本人に何度も逃げられた経験をしたのだろう、と勝手に想像した。
それでは、本日のシャッフルクイズ。
『人出、かわします（ヒトデカワシマス）』
今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント：ノーベル物理学賞受賞。
