まちゃつの徒然日記

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『芙蓉の人』

1895(明治28)年2月16日、厳冬期の富士山単独登頂に成功した人物がいる。野中到である。命懸けの登山であり我が国初の快挙であったが、メディアで伝えられることはなかったという。無理もない。その日は、日清戦争で海軍が清国北洋艦隊を破った直後。近代化の途上にある小国日本が、大国である清との戦争に勝利する目前だったからである。国民もメディアも興奮のるつぼにあったに違いない。国内の雰囲気は、司馬遼太郎著『坂の上の雲』に詳しい。到は、登山家ではない。冒険家でもない。気象学者である。彼の登頂には、高層気象観測という別の目的があった。明治時代の天気予報は、当たらないものの代表だった。天気予報の正確さを期するには、高層気象観測をするしかないと考えた彼は、私財を投じ富士山頂に観測所を建設する。彼の本当の凄さは、たった1人で毎日2時間ごとに24時間態勢で観測を続けたことにある。後に、妻の千代子が山頂まで手伝いに来るが…。寒さの描写は迫真。それもそのはず、著者の新田次郎気象庁の元職員。富士山測候所勤務の経験がある。できれば、夏の暑い日に読むべし。因みに「芙蓉峰(ふようほう)」とは、「富士山」の異名である。決して「不要」ではない。


それでは、本日のシャッフルクイズ。


ジープ、世に出つ(ジープヨニデツ)』


今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント:ジャック・スパロウ船長。