「おぬしも自転車、作らんか？」H高同級生でKB大生のT山が勧めてきた。新しいフレームを購入すると言う。それで、不要になる自分のフレームをまちゃつにプレゼントとなった次第。ハイテンション鋼だから安物（自転車フレーム用ではこの通りだが、自動車用なら高級品。漢字なら「高張力鋼」）。でも無料だから文句を言えばバチが当たる。有り難く頂戴することにした。クロームモリブデン鋼（略してクロモリ）のフレームが出始めた頃だ。丈夫でしなやかな乗り心地だが、非常に高価。H区のT川輪業に展示されていた自転車は、１台２００万円超である。触らせて貰ったが、フレームを親指と人差し指で挟むと凹んだ。なんとその価格で国産高級乗用車が新車で買えた！ 貰ったフレームに塗装が必要だが、まちゃつ好みのライトグリーンでしかもメタリック塗装（当時の最新技術）にNHさんがしてくれるとのこと。有り難い。変速機、クランク、ハンドル、ホイール、ギア、水筒、シートポスト、蝶ナット等、すべてアルミ製だ。アルミギアもT川輪業で薄く加工して貰い、前３段後ろ６段、合計１８段変速の自転車を組み立てた。購入せずに組み立てたお陰か、費用が安く済んだだけではなく、構造も詳しく知ることができた。ベアリングリテーナーなど、自分で組み立てない限り、終生お目にかかることはなかっただろう。T山とは職場も同じで、様々な所へサイクリングに出かけた。三十路を前に腎臓病が元で亡くなる。K岡、Y田などと雀卓を囲む時も度々あったが、役満を聴牌した時など、必ず鼻歌が出る憎めない性格である。筋金入りのサイクリストでもあり、自転車雑誌にも写真が掲載された。なんとT山は、恵まれない体格にも関わらず、五合目の２４００ｍまで自転車でこぎ上り、その後は愛車を担いで（！！）富士登頂を果たしたのだ。富士山では、雷が上からではなく横から落ち、雨は下から降ってくるということばが思い出される。まちゃつの自転車は、奈良に住んでいる頃お隣のSさんに差し上げたが、どうしているだろう。
それでは、本日のシャッフルクイズ。
『酢蛸は餓死（スダコハガシ）』
今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント：渡る世間は…。
