まちゃつの徒然日記

まちゃつのブログです。はてなダイアリーから引っ越してきました。

クチナシ

梅雨も一休みの午後、垂直長屋を這い出る。珍しく散歩でもしようかという気分である。活断層の成す緩やかな坂を上ると、200メートルで公園北口。普段なら通り過ぎるだけの入口だが、この日は香りに誘われて立ち止まってしまった。花壇から重い芳香を放っているのはクチナシ。光沢のある葉と細長く白い六つの花弁が特徴。「♪いまでは指輪も回るほど やせてやつれたお前のうわさ…」頭の中では、渡哲也が勝手に歌い出す。クチナシは、古典落語の枕にも出てくる。どんな花でも木でも取り揃えてある、と豪語する植木屋が登場。「そんなら、しゃべる花もあるんかい!」という客の問いに、勢いで肯定してしまう。「お前なんちゅう名前や?」と尋ねられて「サクラ」「ウメ」「ボタン」などは順調に返事。だが、最後に黙ったままの花に行き当たる。「おい植木屋、こいつもの言えへんがな」に対し「あぁ、そら『クチナシ』や」が下げ。落語よりずっと昔の『古今集』に「山吹の花色衣ぬしやたれ問へど答へずくちなしにして」が見える。日本人は、この手のことば遊びを千年以上前から嗜んでいた訳だ。やや小ぶりだからか、樹種名には「コクチナシ」とある。脳細胞が「告知なし」に変換。「君子は危うきに近寄らず」が過ぎり、散歩は400メートルで終了と相成った。


   時期選び
   肺病み消える
   尚之助


それでは、本日のシャッフルクイズ。


『なれこそが医師(ナレコソガイシ)』


今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント:何を考えているか分からない。