まちゃつの徒然日記

まちゃつのブログです。はてなダイアリーから引っ越してきました。

西郷の肝の大きさ

『氷川清話』から
「あの人見寧(のち茨城県知事)という男が若い時分に、おれの処へやってきて『西郷に会いたいから紹介状を書いてくれ』といったことがあった。ところがだんだん話を聞いてみると、どうも西郷を刺しにいくらしい。そこでおれは、人見の望みどおり紹介状を書いてやったが、中には『この男は足下(あなた)を刺すはずだが、ともかくも会ってやってくれ』と認(したた)めておいた。
それから人見は、じきに薩州に下って、まず桐野に面会した。桐野もさすがに眼がある。人見を見ると、その挙動がいかにも尋常でないから、ひそかに彼の西郷への紹介状を開封してみたらはたして今の始末だ。さすがに不敵の桐野も、これには少しく驚いて、すぐさま委細を西郷へ通知してやった。ところが西郷はいっこう平気なもので、『勝からの紹介なら会ってみよう』ということだ。
そこで人見は、翌日西郷の屋敷を尋ねていって、『人見寧がお話を承りにまいりました』というと、西郷はちょうど玄関へ横臥していたが、その声を聞くとゆうゆうと起きなおって『私が吉之助だが、私は天下の大勢などというようなむつかしいことは知らない。まあお聞きなさい。先日私は大隅の方へ旅行した。その途中で、腹がへってたまらぬから十六文で芋を買って食ったが、たかが、十六文で腹を養うような吉之助に、天下の形勢などというものがわかるはずがないではないか』といって大口をあけて笑った。
血気の人見も、このだしぬけの話に気をのまれて、殺すどころの段ではなく、挨拶もろくろくせずに帰ってきて、『西郷さんは、実に豪傑だ』と感服して話したことがあった。
知識の点においては、外国の事情などは、かえっておれが話して聞かせたぐらいだが、その気肝(きも)の大きいことは、このとおり実に絶倫で、議論もなにもあったものではなかったよ。
今の世に西郷が生きていたら、話し相手もあるに―

   南洲の
   後家と話すや
   夢のあと」


それでは、本日のシャッフルクイズ。


『ええ役員も知りなよ(エエヤクインモシリナヨ)』


今度会ったら、答えを言ってね。
ヒント:事を強引に進める。